遺伝で人生決まる(人生は遺伝子の運ゲー)とは言えない理由。ティム・スペクター博士の「双子の遺伝子」を読んで。

コラム

・人生は遺伝ゲーである。遺伝で人生決まる

・遺伝が全て。努力なんて意味ない

こんにちは。

こういうことを言う人が良くいますけど、これってどこまでほんとなんでしょうかね。

 

先日ティム・スペクター博士の双子の遺伝子――「エピジェネティクス」が2人の運命を分けるという本を読みました。

私自身、遺伝子というのものはどこまで人生を左右するのか、遺伝に逆らうのは無理ゲーなのかという点は気になったので。

読んでみた感想ですが、遺伝子が人生に及ぼす影響はある程度あるものの、それだけがすべてでは全くないと思いました。

遺伝子で人生決まるとは言えない理由

ほんの10年ほど前、研究者たちは、妊娠中の母親の食習慣が子供の遺伝子を変化させ、その変化は子供の生涯を通じて維持され、孫世代にまで受け継がれる可能性があることを発見した。その変化は、「エピジェネティクス」ー後成説(エピジェネシス)+遺伝学(ジェネティクス)の意ーと呼ばれるメカニズムによるもので、遺伝子は、文字通りスイッチがオンになったりオフになったりした。そして、従来の遺伝学の定説に反して、こうした遺伝子の変化は、次世代に受けつがれていった。この研究があつかった母親はラットだったが、近年人間でも同様のことが起きていることが確認され遺伝についての考え方に革命が起きたのだ。

知ってる方は多いと思いますが、近年はエピジェネティクスという考え方が取り入れられ、遺伝子の形質は後天的に変化するというのが生物学における主流な考え方です。

身長や体重に関しては約8割が遺伝とのことですが、性格や健康に関する遺伝子に関しては本人の環境や生活習慣で遺伝子のスイッチがオンになったり、オフになったり変化します。

ティム・スペクター博士は書籍の中で、人間と遺伝子の関係について長く信じられていた仮説のいくつかを見直すことが求められると述べています。

仮説①遺伝子はそれだけで人間の本質を極める

仮説②遺伝子と遺伝による運命は変えられない

仮説③環境は遺伝子に永続的な影響を与えない

仮説④両親や祖父母が環境から受けた影響をあなたを受け継がないつまり獲得形質は遺伝しない

遺伝子と環境は相互作用を起こす

遺伝子と環境は相互作用を起こします。ある特定の環境だと遺伝子が変化したり、もともと人間がもっていた遺伝子がオフになることがあります。

逆にある特定の環境だと、その人がもつ遺伝子がオンになり、その人の行動を左右するということが起こり得ます。

幸福感を含む人生の多くの側面において遺伝子は重要な役割を果たしているが、あらゆる証拠が示すようにそれが全てを決めているわけではないのである。私たちは皆楽観性と悲観性を調整する遺伝子を受け継いでおり、その遺伝子は人によって異なる。これまで私たちは遺伝子とそれに伴う思考形式は生来のもので変化しないと考えてきたが、実際にはそれらはエピジェネティックに変化しリセットされそれに伴って性質や人格も変わっていくものなのだ 。

例えば、妊娠中の母親の食生活が子供の遺伝子を変化させたり、生まれつき悲観的な遺伝子を持つ人が認知行動療法などで考え方を変えることで、楽観的に物事を考えられるようになって、うつ遺伝子がオフになることが最新の研究では判明しています。

遺伝子がすべてと悲観せずに、できることを行えば必ず状況は好転します。

一卵性双生児の人生はまったく同じにはならない

双子の遺伝子には一卵性の双生児でも、大人になった場合の双子を追跡すると、異なる面が多く見受けられるという具体的な事例の紹介がたくさんされています。

双子でも一人でいたときに、何を考えていたか、どんな本を読んだか、どんな人と付き合っていたかによって脳内で受け取る信号の流れが微妙にちがい、その積み重ねで性格や病気は出来上がるのではないかと著者のティム・スペクター博士は考察しています。

とても面白いと思います。

遺伝子だけですべてが決まるというのは昔の常識なのです。現代は遺伝子は環境によってオンになったり、オフになったりするし、変化することさえあるというのが定説です。

社会的に有利になりやすい遺伝子は確かにある

知能、身長、体重は一般的に遺伝しやすいと言われています。

ルックスに恵まれたり、知能が高ければこの資本主義ではお金を稼ぎやすい傾向にあるでしょう。それは間違いなくあります。

そして、それに恵まれない方が遺伝子に恵まれなかった、人生は遺伝ゲーと言いたくなる気持ちもわかります。

ただ、それらはわかりやすいからハイライトを浴びるだけで、才能ともいえます。

もともと、この世界はそれぞれが自分の強みや得意なことをみつけ、何らかの分野に秀でたり、スキル・技術を持ったりする必要があると思います。

先天的に才能があった人はそれをしなくてもスムーズに成功したりしますが、無いもの生き方は基本的には中身を磨いていくといったことになります。

これに関して賛否両論あると思いますが、ある意味この過程を楽しむといったことが人生の醍醐味ではないかと私は思います。

遺伝は生物の多様性としてあって当たり前。しかし、それがすべてではない。

むしろ環境によってガンガン変化します。

なんなら人間は自分のいる環境を主体性をもって変化させることもできますし、環境を移ることもできます。

結局、自分が適合できる環境を見つける、そこで成長と貢献をするという話になってくると思います。

人生は遺伝ゲーと考えている方にはぜひ一度この本は読んでみてほしいと思います

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