【要約】『情動はこうしてつくられる』──「怒り」や「悲しみ」は脳がつくった“物語”だった?
こんにちは、です。
今回は、神経科学者リサ・フェルドマン・バレットによる話題の一冊『情動はこうしてつくられる(How Emotions Are Made)』をご紹介します。
「人間の感情って、生まれつき決まってるんじゃないの?」
「怒ってる顔って、世界中で同じなんじゃないの?」
──そんな“当たり前”を、根本からひっくり返してくる衝撃の内容でした。
感情は「脳が構築する」ものだった
私たちはつい、感情を“自然に湧き上がるもの”だと思いがちです。
でも、バレット博士によると、実は感情は 脳が身体の感覚や文脈をもとに「予測」し、「意味づけ」して構築しているものなんです。
たとえば、心臓がドキドキしているとき──
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デート中なら「ときめき」かもしれないし、
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ホラー映画の最中なら「恐怖」かもしれない。
同じ身体感覚でも、「文脈」によって感情は変わるというわけです。
「怒り」や「悲しみ」は普遍じゃない
映画やアニメでもよく見る「怒ってる顔」や「泣き顔」ってありますよね?
でもバレット博士は、「感情に特定の顔はない」と言います。
つまり、
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怒り=眉間にしわ、じゃない
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悲しみ=涙、でもない
感情の表現は文化や学習で変わるというのが、最新の科学の見方なんです。
感情は“予測”によって生まれる
脳は常に「次に何が起きるか?」を予測して行動しています。
それは感情も同じ。
脳は、今の身体状態や環境から「これは●●という感情だな」とラベルを貼っているにすぎません。
つまり、感情は反射ではなく、「解釈」。
これは「脳の予測モデル」と呼ばれる考え方で、近年の認知科学でも重要な視点になっています。
感情の“語彙力”があなたの人生を変える?
本書で特に印象的だったのが、「感情の粒度(グラニュラリティ)」という概念。
感情を“ざっくりとしたカテゴリ”でとらえるのではなく、
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「ムカつく」ではなく「失望」「無力感」「侮辱感」など、
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より細かく、正確に感情をラベリングできる人ほど、
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感情をうまくコントロールでき、ストレスにも強い
という研究結果もあるそうです。
つまり、感情語彙を増やすことは、感情の自己コントロール力を高めるトレーニングにもなるんですね。
感情は、文化と学習がつくる
「感情は本能で決まってる」と思いがちですが、実は違います。
赤ちゃんの脳には「怒り」「悲しみ」の感情モジュールがあるわけではなく、周囲の大人たちの反応や言葉を通じて、感情概念を学んでいくのだそうです。
つまり、
感情は、“脳が文化を取り込んで発明した”もの
と言えるのかもしれません。
おわりに:感情は変えられる
『情動はこうしてつくられる』を読み終えて一番心に残ったのは、
感情は、コントロール不能な反応ではない。
むしろ、自分の脳がつくりだした“意味づけ”にすぎない。
という事実です。
裏を返せば、意味づけを変えれば、感情も変えられる。
マインドフルネスや認知行動療法(CBT)といったアプローチが効果を持つ理由も、ここにあるのだと感じました。
まとめ:この本が教えてくれること
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感情は「生得的」ではなく、「脳が予測と学習で構築するもの」
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怒り・悲しみ・喜びなどは文化により異なる
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自分の感情を精密に理解する力(感情の粒度)が人生を変える
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感情は「変えられる」し、「鍛えられる」
感情をもっと深く理解したい人、感情に振り回されがちな人に、ぜひおすすめしたい一冊です。
興味があれば、また本書の内容を深掘りした記事も書いてみますね。
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